コンポーザブルCDPについて
コンポーザブルCDPというツールが注目を集めています。オールインワンのパッケージではなく、必要な機能だけを組み合わせて使うコンポーザブルCDPについて、その特徴からメリット・デメリット、今後について解説していきます。
これまでのCDPについて
CDP(Customer Data Platform)について簡単におさらいしましょう。CDPとは、「顧客の情報を集めて、整理整頓するための大きな箱」のようなものです。ウェブサイトでの行動、お店での購入履歴、アプリの利用状況、アンケートの回答など、バラバラに保管されている顧客の情報を一か所に集約します。
集めた情報を一人ひとりの顧客ごとに整理して、顧客に合わせた最適なアプローチに活用する、というのがCDPの基本的な役割です。これまでのCDPは、この「情報を集める」「整理する」「活用する」といった機能がすべてセットになった全部入りパッケージ製品として提供されるのが一般的でした。
コンポーザブルCDPとは
コンポーザブルCDPは、この「全部入りパッケージ」とは全く違う考え方から生まれました。コンポーザブル(Composable)とは「組み立て式」という意味です。必要な機能(ブロック)だけを自分で選んで自由に組み合わせ、自社にピッタリのCDPを構築する、それがコンポーザブルCDPとなります。
多くの企業は、すでにデータウェアハウス(DWH)と呼ばれる、データを保管しておくための大きな倉庫を持っています。コンポーザブルCDPでは、この自社のデータ倉庫を土台にして、「データ収集用のツール」「データを整理するツール」「データをメール配信ツールなどに送るツール」といった、専門的な機能を持つSaaS(ソフトウェアサービス)をブロックのように組み上げていきます。
従来のCDPが「セット販売」だとしたら、コンポーザブルCDPは「バラ売り」や「DIY」のイメージに近いと言えるでしょう。
コンポーザブルCDPのメリット
組み立て式のコンポーザブルCDPには、いくつかの大きなメリットがあります。
コスト最適化
全部入りパッケージの場合、使わない機能があっても料金に含まれてしまいます。コンポーザブルCDPなら、本当に必要な機能だけを選んで契約するため、無駄なコストを削減できます。また、データは自社の倉庫に保管するため、CDPサービスに追加で高額なデータ保管料を払う必要もありません。
柔軟性
ビジネスの状況は常に変化します。「新しい分析ツールを試したい」「こちらのメール配信ツールの方が良さそうだ」といった場合に、ブロックを入れ替えるように、柔軟にツールの追加や変更ができます。
ベンダーロックインの回避
全部入りパッケージだと、一度導入するとその会社の製品やサービスに縛られてしまい、簡単には乗り換えられません。コンポーザブルCDPなら、各機能が独立しているので、より良いツールが見つかれば、その部分だけを入れ替えることが可能です。
データガバナンスの強化
顧客の大切な情報は、外部のサービスではなく、自社で管理しているデータ倉庫に保管されます。そのため、セキュリティルールを徹底しやすく、安心してデータを管理・活用することができます。
コンポーザブルCDPのデメリット
もちろん、良いことばかりではありません。導入を検討する上で知っておくべき注意点もあります。
構築・運用の複雑さ
どのツールをどう組み合わせるかを考え、連携させる作業は、パッケージ製品を導入するより手間がかかります。
技術的専門知識
組み立て作業には、データやシステムに詳しい専門家の力が必要不可欠です。社内に対応できる専門チームがない場合、導入や運用が難しい可能性があります。
コンポーザブルCDPのこれから
コンポーザブルCDPは、今後ますます重要になっていくと考えられています。その理由は大きく二つあります。
一つは、プライバシー保護の流れです。インターネット広告で広く使われてきた「サードパーティCookie」という技術が廃止に向かっており、企業が自社で集めた顧客のデータ(ファーストパーティデータ)をいかに活用するかが、これまで以上に重要になっています。コンポーザブルCDPは、この自社データを安全かつ柔軟に活用するための最適な仕組みなのです。
もう一つは、AI(人工知能)との相性の良さです。自社のデータ倉庫に整理された高品質なデータが大量にあれば、AIはそれを学習して「どの顧客が商品を買ってくれそうか」「どの顧客がサービスを解約しそうか」といった未来の予測を高い精度で行うことができます。コンポーザブルCDPは、まさにAI時代のデータ活用の土台となるアーキテクチャと言えます。
コンポーザブルCDPで押さえるべきポイント
コンポーザブルCDPは、単なる新しいツールではなく、データをビジネスの中心に据えるための新しい「考え方」です。自社の状況に合わせて、データ活用の未来を描くための一つの有力な選択肢として、ぜひ注目してみてください。
